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平尾を中心としたその周辺の地域住人・商店・事業所などによる地域密着情報サイト“ひら・ぐら”の平尾の歴史紹介第3話です。

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平尾の歴史(史跡)
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平尾の歴史(史跡)
散策 第3話

平尾の歴史(史跡)散策 第3話

野村望東尼|平尾の歴史

 平尾の南西部の閑静な住宅街の一角に(平尾5丁目)、【平尾山荘――地元ではもっぱら望東(ぼうとうさん)】と親しまれている、茅葺きの陋屋(ろうおく)が静かに佇んでいる。平尾の歴史的史跡としては、これ抜きにしては語れない位に、文化的に貴重な茅屋である。
 日本の近代化の端緒となった『明治維新』において、只一人のたぐいまれなる女流勤皇家(兼)歌人――野村望東尼――通称モト。
 若い時から歌道に親しんでいたが、夫の他界後一念発起して歌道研鑽をめざし京へ・・・そこで生々しい勤皇倒幕等の志士達の心意気に触れ合い、自らも傾倒。地元に帰ってからも、秘かに志士達の活動を陰ながらバックアップ。そのことが藩に知れ、糸島の離れ小島【姫島】にて幽閉さる。それを伝え聞いた高杉晋作は奇兵隊を使い救出。まさに男顔負けの破天荒な『あっ晴れ女流勤皇家』ぶりであったとか。

 そこで今回は、少々浮世ばなれした四人の風来坊――ご隠居さんに若旦那、すっとぼけの八五郎に熊五郎と云った、お邪魔虫を先導役にしながら、モト尼女史の実像と云うか、何故志士達が平尾山荘の茅屋に結集していたのか、そこいら辺りの《ムムムッツ》とした所に焦点をあてつつ『タイムスリップ流の空想をたくましくしながら、ドラマを展開してみたいと思います。お付き合いのほどお願い致します。
 尚、挿絵の手配書(似顔絵)は、平尾校区の剣道場【一到館】道場のオーナー王丸家に秘蔵されていた、貴重な資料からの引用です。


寸劇【勤皇の志士達を惹きつけた、幕末の歌人・望東尼女史の魔力】

『第一幕 平尾望東祭に寄せて・・・風来坊談義』

【登場人物】
ご隠居・若旦那・八五郎・熊五郎

熊、今日は何の日か、知ってるけ?
霜月の6日か・・・ハテ? 何の日でしたっけ、若旦那?
望東さんの祭りだ。お主も平尾の住人だろうが! こんなの常識常識。
そもそもじゃな、明治維新を陰で支えた『野村モト尼』と云う、平尾校区が誇る女傑(じょけつ)を讃(たた)える慰霊祭のことじゃ。(毎年11月6日に挙行)
元々は赤坂けやき通りの柳原の地で生まれ育った人なんだが、ご亭主と死に別れた後、歌人として平尾の奥里(おくざと)に草庵(そうあん)を編(あ)み、傍(かたわ)ら維新の志士達を陰で支えたと云う、日本の歴史に燦然と輝く、女流勤皇家なんだぞ。
ヘーッ、で、維新の志士って、一体どんな人物でやす?
長州の高杉晋作を初め、地元黒田藩の平野二郎國臣、それに驚くなよ薩摩の西郷隆盛じゃ。
そ、そんな歴史上の超大物連中を、女の細腕で支えたってんでやすかい!
そいつは恐れ入谷の鬼子母神! ほんじゃ若、得意の『四次元テレビマシン』で、当時の様子をのぞき見るってのは、いかがなもんでやす?
ウム、祭りの盛り上げに、ひとつ大奮発して当時を再現してみるとするか!

『第二幕 平尾の山荘・茅屋にて』
西郷 高杉どん、貴公が平尾村の草庵に忍んでいると聞き、尋ねたんじゃが・・
高杉 これは誰かと思えば、西郷南州(なんしゅう)公、よくぞここが分かりましたな。
西郷 隠れ住むには格好の茅屋(ぼうおく)、幕府転覆の密議には持ってこいの・・・
平野 幕府転覆の密議とは、穏やかならざる言い分でござるな。
西郷 ヤヤッ、平野殿もご同席か!益々もって怪しき企(たくら)みの最中(さいちゅう)と見ゆる。
平野 怪しき企み? そりゃぁ飛んでもない誤解でござる。
高杉 我等は、ただ息抜きにこの山荘にたてこもってるだけでござるよ。
西郷 ただの息抜きじゃっと? 長州や黒田藩切っての勤皇の志士が、こんな草深きド田舎で、一体何の息抜きにごわすか。
モト ド田舎で悪うござんしたね、南州公さま。
西郷 ややっ、これはモト尼のごりょんさん、アンタも一枚加わってござったか。いつ京の都を放れ、こちらに身を隠してごわす?
モト 身を隠すなんて、人聞きの悪いこと! ここは【平尾山荘】云うて、元々私が老後を過ごすため、秘(ひそ)かに編んだ『隠れ里』どすえ。
西郷 まことでごわすか? なにやら狐にでも鼻つままれた様な気分でごわす。
モト ホッホッホッ、折角尋ねられたこと故、粗茶なと進ぜまひょ。しばしお待ちを・・・

『第三幕 密議の真相』
平野 さて、南州公にお茶など、似合い申さぬ。まもなく日も傾いて来もそう。されば、ササ(酒のこと)などいかがでござる。
西郷 酒? 望む所なれど、息抜きならば息抜きらしゅう、博多には確か『柳町』とか申す、祇園にも劣らぬ出会い茶屋があるはず!
高杉 西郷どん、それがし達が態々この草深き奥里『平尾山荘』を選びし訳は・・
平野 大きな声では申せぬが、実は、この山荘の裏手には、奥の院があり申す。
高杉 都を追われた祇園の芸妓(げいぎ)衆が、秘かに匿(かくま)われてござる。
西郷 ナ、ナヌ! 都を追われた芸妓・舞子達が、匿われておるじゃっと!!
平野 京で『桂小五郎・月形半平太』と云った同志達と、接触のあった芸妓達は、皆幕府の犬どもに狙われてござる。
西郷 ウムウム、あの連中達は倒幕論の急先鋒でごわすからのォ。なーるほどそう云う訳か!
高杉 ふっふっふっ、そう云う訳でござる。
西郷 祇園のピカイチ芸妓衆が、こぞってやって来たとなれば、博多の芸者衆を鼻にもかけぬ、お主達の下心、見えたぞ、見えたぞ!!
平野 イッヒッヒッヒッ、お分かりかな、南州どん?
西郷 分かった、分かった、分かり申した! となると、月形お気に入りの『雛菊(ひなぎく)』や桂が贔屓(ひいき)にしていた『お龍さん』も、揃(そろ)ってごわすか?
高杉 南州公、鼻の下が伸びて来ており申すぞ!

『第四幕 密議の真相続き』
西郷 早速ながら、久しぶりに『雛菊』の顔でも拝みとうごわす。
高杉 ところがどっこい、ひとつだけ難問がござる。
西郷 難問じゃっと? さては金(カネ)でごわすか?
平野 いやいや、カネではござらぬ。和歌、短歌でござるよ。
高杉 モトニのごりょんさん、明けても暮れても『五・七・五・七・七』の和歌の道にご執心(しゅうしん)でござる。
平野 芸妓衆にも、連日五・七・七の猛特訓をしてござって・・・
高杉 あの妓(こ)等と遊ぶにも、和歌詠みの素養がないことには、呼んでも貰えぬ。
西郷 たかが芸者遊び如きに、『五・七・五』の語呂合わせとは、武士(もののふ)にもあるまじきたわけた話。そんなことじゃ腑抜(ふぬ)けになり申すぞ!
モト これからの新制日本を切り開いて行くには、進取の精神と粋(いき)な風流心が必要どす。【浮雲の かかるもよしや 武士の 大和(やまと)心の 数に入りなば】どすえ、南州公さま。
平野 郷(ごう)に入れば郷に従うと申す。貴殿も薩摩流の風流心を持ち合せてござろうに。
西郷 風流心じゃっと? されば・・・『山荘の 奥の院を 尋ぬれば・・』
高杉 フムフム、『山荘の 奥の院を 尋ぬれば』か、なかなかいい調子ですぞ
西郷 『女狐(めきつね)どもに 魂(たま)抜かるらん』 こんなもんでどうでごわす・・がっはっはっ!
モト ほっほっほっ、見かけによらず上出来どすえ。では、南州公の折角(せっかく)の苦心作ゆえ、『女狐の 袖追う侍(ぶし)の 鼻の下 小田原(おだわら)提灯(ちょうちん) にもさもにたり』 と受けましょう。
平野 流石(さすが)はモトニのごりょんさん、南州公、一本とられましたな。
モト いつのまにやら、灯(ひ)ともし頃になりました。女狐さん達も待ちかねておりましょう。ささ、隠れ里の方へ足をお伸ばしなされませ。

『第四幕 密議の真相続き』
あれれっ、『ひな菊』ちゃんや、お色気たっぷりの『お竜姉さん』が、現われるんじゃなかったっけ?
『月さま、雨が・・・』 『春雨じゃ、濡(ぬ)れて参ろう』テナ具合に・・・
何を寝ぼけたことを言ってる! 『四次元テレビマシン』は終わりだ。
モト尼媼(おうな)の生誕200年を記念する、厳粛(げんしゅく)なる慰霊祭の最中だぞ。いかに座興とは云え、そんな助平根性丸出しにするとは、平尾校区の恥さらしじゃ。
とは云ってもさ、昔から『歴史の陰に女あり』って云うじゃござんせんか!
まぁ確かに『歴史の裏に女あり』とは、一面の真理ではあるがの・・・
さいでやしょ、だからさ、あっし等モトニごりょんさんに、スポットライトを当てて上げようとの、親心で・・・
さしづめ『維新の陰にモトニ嫗(おうな)あり』とでもか! 維新前夜、勤皇の志士達は、夜な夜な祇園辺りへ繰り出し、【酔うては枕す美人の膝、醒(さ)めては握る天下の権】とばかりに、徳利片手に祇園大路を闊歩(かっぽ)してたとか・・・
さいでやしょ! 男が一肌・二肌脱ぐにゃ、やっぱり綺麗どころのトチチリシャンがいなくっちゃ、さまになりやせんぜ。
『お富士さん 霞(かすみ)の帯(おび)を 解かしゃんせ 雪の肌身(はだえ)が 見とうござんす』とくらぁ。
『恋に焦(こ)がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬホタルが 身を焦(こ)がす』ってね。
『色が黒くて 貰い手がなけりゃ 山のカラスは 後家ばかり』っと。
何やっとんじゃ。誰が何と言おうと、モトニ嫗には志士達の結束を促した【紅の 大和錦も 色々の 糸まじえてぞ 彩(あや)は織りける】が一番お似合いじゃ。
決まりですな! そんじゃ、八と熊とが余計な下心を燃やさぬ内に、さっさと引き上げやしょう。
それがええ、それがええ。ほれほれ、ぽけっとしてないで、引きあげますぞ!
終わり